発達障害とは?
発達障害とは、脳機能の発達の偏りによる障害です。
生まれつき持っている脳の性質や働き方、その後の発達の仕方に偏りがあることで起こる言語や行動、情緒などの特性を「発達障害」といいます。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動症(ADHD),学習障害/局所性学習症(LD/SLD),発達性協調運動障害(DCD)の大きく分けて4つのタイプがあります。
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他それに類する脳機能障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障害者支援法 第二条)とされています。
最近では、診断基準(DSM)の改定に伴い、同じ状態であっても「自閉スペクトラム症」「注意欠如多動症」「局所性学習障害」等の診断名を用いるようになりました。
【自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)】
①社会性 ②コミュニケーション ③イマジネーション の三領域における障害。
人とのコミュニケーションにおいて、言葉や視線、表情や身振りなどによるやりとりが苦手だったり、自分の気持ちを伝えることや、相手の気持ちを読み取ることが難しかったりするといった特性があります。また、特定のことに強いこだわりを持っていたり、感覚の過敏さ(または鈍感さ)を持ち合わせていたりする場合もあります。
<ASDの特性例>
・興味のあることに関心が集中する ・こだわりが強い ・対人関係や社会的コミュニケーションに困難がある
【注意欠如・多動症(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)】
注意の障害と、多動性・衝動性の障害の両者あるいはどちらか示す障害。
注意し続けることができず作業にミスを生じやすい(不注意)、落ち着きがない・待つことができない(多動性・衝動性)などの特性があります。不注意と多動性・衝動性の両方がある場合と、どちらか一方が顕著に現れる場合があります。
<ADHDの特性例>
・忘れ物や失くしものが多い ・気が散りやすい ・集中できない ・じっとしていられない ・待つことが苦手
【学習障害/局所性学習障害(LD/SLD:Learning Disorder/Specific Learning Disorder)】
学習障害(LD)は、知的障害とは異なり、全般的な知能の遅れはなく、読む・書く・計算するといった特定の学習行為において支障が認められるという特性があります。
局所性学習障害(SLD)とは、視覚・聴覚・知能などに障害は認められず、環境的な要因はないのに、読む・書く・計算する、または推論する能力のうち、特定のものに対して習得と使用に著しい困難を示す状態です。
<LD/SLDの特性例>
・読めない:文章を正確に読んで理解するのが難しい
・書けない:文字を正確に書くことや、道筋をたてて文章を作成するのが難しい
・計算できない:暗算や筆算など、数の概念を理解することが難しい
・推論できない:結果を予測したり、結果から原因を推し量ったりするのが難しい
【発達性協調運動障害(DCD:Developmental Coordination Disorder)】
知的発達に遅れはなく、筋肉や神経、視覚・聴覚などに明らかな以上も認められないが、日常生活における協調運動が、年齢などに応じて期待される水準と比較して、不正確、時間がかかる、ぎこちないなど、いわゆる不器用と言われる状態です。
手と手、目と手、足と手など、複数の身体部位を協力させて行う運動が著しく困難です。
同年代の子供に比べ運動が目立って苦手な状態で、体操や手遊びなどを真似て体を動かすことが非常に苦手です。
<発達性協調運動障害の特性例>
・キャッチボールが苦手 ・消しゴムを使うと紙が破れる ・靴紐を上手に結べない ・自転車に乗れない
これら4つの発達障害は、それぞれの特性が重複しており、多くの類似した症状を示します。
また、これらの発達障害の特性や傾向がいくつか見られるものの、診断基準を満たしているわけではなく、確定診断ができない状態のいわゆる「グレーゾーン」に分類される場合もあります。
「グレーゾーン」は正式な名称ではなく、「発達障害の傾向があること」を示す用語です。
発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごとは十人十色で、得意・不得意の特性と、その子が過ごす環境や周囲の人との関わりのミスマッチから、社会生活に困難が発生します。
そのため、発達障害の特性を「自分勝手」「わがまま」「困った子」などと捉えられ、「怠けている」「親の育て方が悪い」などと批判されることも少なくありません。
しかし、特性ゆえの困難さは、環境を調整し、特性に合った学びの機会を用意することで軽減されます。
お子様と周囲の人が、その子の個性・能力・希望などを理解した上で、その子に合ったサポートと環境調整をしていくことが大切です。
★次回は、発達障害の4つのタイプについて、それぞれの特性や、日常生活で見られる特性例などをより詳しく書いていきます。