感覚統合療法(SI)とは?

2023年8月18日

感覚統合療法(SI)とは?

 

 

 

 

感覚統合療法(Sensory Integration:SI)は、アメリカの作業療法士のエアーズ(Ayres,A.J.)がまとめたもので、LDや自閉スペクトラム症を含めた発達障害のある子等へのリハビリテーションの一つで、1980年代に日本に紹介されました。

 

感覚統合療法は、発達に課題や困り感のある子どもに対するリハビリテーション、療育実践として、主に医療現場(作業療法)で発展してきました。

感覚統合療法では、子どもの学習、行動、情緒あるいは社会的発達を脳における感覚間の統合という視点で分析し、治療的介入を行います。

対象は、限局性学習症や注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症、発達性協調運動症など、学習や行動、協調運動の発達に困り感を持つ子どもたちが中心ですが、その理論と実践の原理は、一般の育児や保育、教育にも活かすことができます。

 


感覚統合とは?

 

脳に流れ込んでくるさまざまな感覚情報を、脳で認知して選択・整理し、判断したことを運動神経を介して筋肉に伝え、運動を起こすことを感覚統合と呼びます。

 


感覚とは?

 

私たちは日々、光や音など、たくさんの刺激に囲まれながら生活しています。

そのたくさんの刺激が身体に加わっていることを感じる働きを感覚といいます。

 

人間の感覚には、既によく知られている五感(触覚視覚聴覚味覚嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態・筋肉の伸び縮みや関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった合計7つの感覚があります。

 

・触覚:皮膚で感じます。危険を察知したり、触って何かを確かめたり、痛み、温度、圧迫などの情報を脳に伝えます。

・固有受容覚:筋肉、腱、関節などで感じます。手足の位置や運動の様子、物の重さなどの情報を脳に伝え、姿勢を保持したり、体をスムーズに動かすために働きます。

・前庭感覚:耳の奥の前庭器官で感じます。平衡感覚ともいわれ、頭の傾きや動き、スピード、重力を脳に伝えます。目の動きに関連する働きもあります。

 

これらの感覚は、生活していると、絶えずさまざまな感覚器官から入ってきます。

私たちの脳は、このたくさんの感覚をきちんと分類したり整理したりすることができ、これを統合といいます。

この働きによって、その場その時に応じた感覚の調整や注意の向け方ができるようになり、自分の身体を把握する、道具を使いこなす、人とコミュニケーションをとるというような周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。

ところが、発達障害を持っていると、感覚情報を統合することが難しく、様々な場面で適応出来なかったり、つまずきを起こします。

 

この統合という機能を何かに例えていうならば、交通整理をしている警官のようなものです。

たくさんやってくる車を警官がきちんと整えることでスムーズに車が走ることができるように、身体に入ってくる感覚に対して統合機能が正しくはたらくことで、正しく感覚を整理し、取り入れることができます。

しかし交通整理ができていないと、車はどこを走っていいか分からなくなり、混乱し、渋滞してしまいます。

統合がうまくいかないと、次々にやってくる感覚の強弱を調整したり、感覚を受け入れる量を調節することがうまくできず、混乱してしまうという状態を引き起こしてしまうのです。

 


感覚統合がうまく行われていないと?

 

感覚統合が十分に成熟していないと情緒面、対人面、学習面、言語面など問題が起こってきます。

以下で感覚統合がうまくいかないと、どのようなことが起きるのか、いくつか例を挙げます。

 

① 落ち着きがない

・周りの刺激(感覚入力)にすぐに反応してしまう

・不注意、集中ができない

 

② 触覚、前庭感覚、視覚や音刺激に対して過敏である

・触られることを極端に嫌がる

・ブランコなど大きく体が揺れたり、不安定になることを極端に怖がる

・新しい場所が苦手

・ドライヤー、泣き声など特定の音が苦手

 

③ 感覚刺激に対して鈍さがある

・頭を叩いたり、自分から強烈な刺激を求める

・体の痛みに気づかない

・声をかけられても気がつかない

 

④ 動作の協調性の問題(不器用)

・跳び箱、縄跳びやボール投げなどが大きな運動が苦手

・ひも結びや箸の使い方など細かな運動が苦手

 

⑤ 言葉の遅れ

・ことばが出ない

・目が合わない、振り向かない

・自分が思っていることをうまく言えない

・助詞の間違い

 

⑥ 対人関係

・友達と上手く遊べない

・ルールの理解ができない

 

⑦ 自分の行動をうまくコントロールできない

・待てない、すぐに怒るなど衝動的な行動をとる

・気分の切り替えができない、強いこだわりがある

 

⑧ 自分に自信が持てない(心理的問題、二次的問題)

感覚統合に問題があると、いろいろな活動に対して、失敗することが多くなります。周りからは「怠けている」「甘えている」といった見方をされることも多くあります。その結果、子供は自信がなくなり消極的になったり、投げやりになったりすることがあります。

 


感覚統合の難しさと、発達障害との関係は?

 

数々の発達障害の症状には、感覚統合がうまくいかないことが関わっている場合があります。
感覚統合の仕組みを理解することは発達障害への理解にもつながります。
感覚統合の仕組みをもとに生み出された感覚統合療法は、限局性学習症(SLD)、発達性協調運動症(DCD)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)がある子どもによく利用されている療育方法でもあります。

感覚統合のつまづきを評価するには?

 

・自由な遊び場面での観察:

姿勢やバランス、からだ全体をスムーズに動かせるかどうか、目の動き、感覚刺激に対する行動などを観察します。

 

・感覚統合検査:

必要に応じて感覚統合に関係する検査を行います。

 

・保護者の方、園や学校の先生などからの情報収集:

保護者の方から今までの発達の経過や現在の様子などをうかがったり、日常生活場面での感覚刺激に対する行動などチェックリストに記入してもらったりします。これらの情報をもとに感覚統合の機能について検討し、感覚統合療法をすすめていきます。

 


感覚統合療法の内容

 

① 子供たちが自分から求めている、楽しいと思える活動(やってみたい)を、

② 子供たち自身が自分から能動的に行い(やらされるのではなく)、

③ うまくいったと実感できること(成功体験)

この3つがそろっている時、感覚統合機能が最も発達するというのが、感覚統合療法の基本的な考えです。

そのため、感覚統合の活動内容は、子供たちが「楽しい!」と思えるものを取り入れます。

作業療法士(OT)は、感覚入力をうまく整理し、子ども自身が色々なことに気がつけるよう、また適切に体を対応させていけるよう、感覚入力の方法(触り方、揺らし方など)を微妙に調節したり、関わり方を工夫したりしています。

感覚統合は積み木を積み上げるように発達します。
読み書きなどの教科学習や言葉の遅れ、手先の不器用さなどの目に見えやすい問題は、ピラミッドの上の方の問題です。
しかし、これらの問題に対する支援では、その土台になっている感覚・運動面へのアプローチこそが重要になります。

 

感覚統合療法では、作業療法士(OT)がお子さまに寄り添いながら、お子さまが「楽しい!」と思うような遊びや運動を通して、感覚機能の未熟だったり苦手だったりする部分を伸ばしていくことをねらいとしています。

 


 

 

 

 

 

参考:

・LITALICO発達ナビ「感覚統合とは?」子どもの気になる行動の理解につながる感覚統合の視点【専門家監修】

・奈良県総合リハビリテーションセンター「感覚統合療法  リハビリテーションのご案内」

・感覚統合スタジオ  ワールドキッズ新宿教室 「感覚統合療育ってなに…?」

・日本感覚統合学会(The Japanese Academy of Sensory Integration) ホームページ

・太田篤志 著 「イラスト版  発達障害児の楽しくできる感覚統合」

 

 

 

 

 

 

 

★次回は、感覚統合療法について更に詳しい内容を書きたいと思います。