感覚統合の遊びとは
感覚統合の検査や心理検査に基づいて、お子さまの弱い部分や好きな感覚などを見極め、楽しい遊びや活動を通して発達を促しますが、それは、できないことを繰り返し練習して技能を身につけさせるものではありません。
例えば、ブランコにずっと乗り続けたがるお子さまがいたとします。あまりにそれが続くと、別の遊具に誘導したくなるものですが、そうではなく、「この子には、ブランコに乗った時の感覚刺激が必要なのだ」と考えます。指導者は、一人で好きなように乗せているわけではなく、お子さまの様子を見ながら、強めに揺らしたり、急に止めたりなど、揺らし方を工夫するようにします。また、同じような感覚刺激が入る他の遊びを経験させるなど、お子さまの発達に必要な楽しい活動を通して、徐々に、姿勢の保ち方、目の使い方、体の使い方などの発達を促すようにするのです。怖がっていないかなど、お子さまの様子を見ながら、活動を調整しています。
大切なのは、お子さまが自分からやりたいという気持ちを持てるようにすること。「自分にもできる!」という成功感を味わうことです。
楽しく遊んでいたら、出来ることが増えっちゃった!と、お子さまが楽しく取り組み、力をつけることができるようにするのが、感覚統合の遊びです。
感覚統合の遊びで大切にする感覚刺激
【前庭覚】
バランス感覚ともいわれ、体の動きや傾き、運動の速さなどの変化を知る感覚で、滑り台から滑り降りる時や、ブランコで揺れる時などに感じます。他にも、スクーターボード、ハンモック、ボルスター、フレキサースイング、タオルブランコ、回転キャタピラなどが前庭覚の刺激が入る遊びです。これらの遊具にしがみつくことで、固有覚や触覚の刺激も入ります。
前庭覚は、体のバランス、目の使い方、筋肉の張り、頭の目覚めなどに関与しています。
【固有覚】
筋肉や関節などにあり、手足の位置や体の動きを知る感覚で、体を動かすことで必ず入ってくる感覚です。
ぶら下がったり、押したり引いたり、力を入れて体を動かすことで強い固有覚の刺激が入ってきます。
綱引き、トランポリン、空中ブランコのぶら下がり、重い物を持つ、平均台、ジャングルジム、トンネル、スロープなどで遊ぶ時に入る感覚です。
固有覚は、体の各部分をスムーズに動かす、姿勢を保っておく、などに関連しています。
【触覚】
触ったり触れられたりするときに感じます。触ることで何かを弁別したり、危険を知ったりする感覚で、情緒の発達に関連しているといわれています。
感覚統合の遊びで気を付けること
1.順序性を大切に
【第1段階】ウォーミングアップ
特に感覚防衛や注意の問題を持っているとき、頭の目覚めを適切にする活動から入ります。お子さまのやる気を引き出すような、単純で好きな遊びを思い切り楽しませます。
○興奮しすぎているときには、
・ブランコなどは、ゆっくりとリズミカルな揺れの刺激を。
・マット押しやトランポリンなどで、体に力が入る活動を。
○ぼんやりしている時には、
・フレキサースイングなどで速い回転や、ブランコなどの揺れを少し強くしたり、突然止まったりするなど不規則な刺激を。
・ボルスターやタイヤチューブにしがみつくなど、体に力が入る活動を。
・ボールプールなど、圧迫するような触覚刺激を。
【第2段階】姿勢の取り方や保ち方を育てる
姿勢を保つ、バランスをとる、スムーズに目を使う活動。
【第3段階】運動の組み立て能力を育てる
自分の体を上手に使って、慣れない動きをする活動。
【第4段階】体の左右を強調的に動かす能力を育てる
体の中心を意識させる、右手と左手を強調させる活動。
【第5段階】視知覚や聴知覚、言葉を育てる
2.無理強いせず、楽しく自分からやってみようと思うようなものを
「楽しそうだな」「やってみたいな」という気持ちにさせるように、遊具や小道具の設定、誘いかけの言葉を工夫して行います。
3.ちょっと頑張ればできるものを
簡単すぎるものは飽きるし、難しすぎるものはやる気をなくします。
支援を受けながらでも、ちょっと頑張ればできるような遊びでお子さまの意欲を引き出します。
4.お子さまの様子に合わせて変更できるものを
その時その時のお子さまの様子を見ながら進めます。
お子さまの実態に合わせ、遊びの内容は簡単すぎず難しすぎないものを行います。
遊びに乗ってこなかったら内容を変更しながら行います。
5.安全に気をつけて
吊り具やトランポリンなどを使うので、落下や衝突の危険も伴います。床や壁には柔らかい物を置いたり、硬い物や尖った物にはカバーをしたりなど、配慮して実施します。
参考文献:
・佐藤 和美 著 「たのしくあそんで感覚統合 手づくりのあそび100」
★次回は、感覚統合療法を育むライフスタイルについて書きたいと思います。