授業中などにじっと座っていられず、ソワソワとしたり、動き回ってしまうのはなぜ?
よくある悩みとしては、授業中などに静かに座って先生の話を聞くのが苦手、短い時間なら静かに座っていられるが、5分くらい経つと椅子をガタガタ動かし出したり、手や足をリズムをとるように動かしたりする。授業中に立ち歩いたり、友達に話しかけたりして注意される。好きな授業の時には、ノートをとることに集中して長く座っていられる。授業以外では、棚やブロック塀などに登る、ジャンプして飛び降りて走り回る。教室の窓枠に登って、窓から入ろうとする。大声を出して遊び、声の大きさをコントロールできない。などがあります。
授業中に立ち歩くお子さまは、落ち着きがないや行儀が悪いと言われがちですが、本当は行儀がわるいのではなく、強い刺激を求めているのです。落ち着きがないのは、本人が動きたいと感じているからで、他の子よりもその気持ちぎ強いのは、感覚情報が整理できていないためです。高いところが好き、大声を出すなどの行為も、同じ背景からきています。
どうして落ち着きがないのか?
「多動性」の特性がある
前庭覚の反応が鈍いお子さまは、落ち着きが無い印象になります。視覚的な情報や、体の傾きに関する情報を上手に感じとれないので、脳に外からの刺激が十分に入らないのです。そのため、強い刺激を求めて動き回り、「多動性」があると言われます。
また、手足の動きの調整が苦手なお子さまや、筋肉の緊張が上手に調整できていない場合も、ソワソワと動いたりして落ち着きがなく見られることもあります。
対応策は?
ジャンプ遊びやアスレチック遊びでめいっぱい動くと、前庭覚の働きが調整でき、多動がおさまることがあります。
また、ゆれる遊びやすべり遊びも良い刺激になります。
いずれも、10~30分ほどかけて、体をたっぷりと動かすと良いです。
●ジャンプ遊び
ねらい:上下の動きで前庭覚を働かせます。ジャンプのタイミングをつかむことで、リズム感も働きます。
効果:前庭覚を働かせることで、姿勢の崩れが改善する。ジャンプでは特に、体の中心軸である正中線が整いやすい。また、感覚刺激がよく入るため、自己刺激行動が抑制される。
方法:
①最初はお子さまに自由に飛んでもらい、どのような飛び方をするのか様子を見る(姿勢が崩れやすいお子さまは、ジャンプする時の着地点が前後左右に動きやすい)。
②大人が両手でお子さまの両手を持って支え、介助した状態でジャンプさせる(大人は支えるだけで、あまり力を入れない)。
③介助して、お子さまがバランスをとれるように助けたり、より高く飛べるよう、勢いをつけたりする。
④ジャンプを続けるうちに、高さがアップして、着地点が動かなくなっていき、身体がシャキッとして見える。
※回数の目安は、10分間くらいで100回以上を目標に。
☆ジャンプ遊びをより楽しくするアレンジで、大人がタンバリンなどの楽器を持ち、お子様のジャンプの最高到達点でかまえる。お子さまはできるだけ高く飛び、楽器をたたくようにすると、楽しさがupしそうですね!
●アスレチック遊び
ねらい:日常生活では体験できない動きをして、普段使っている以上に触覚・固有覚・前庭覚を働かせ、全身のボディイメージ作りができる。とくに、棒や縄などを握る時に親指に力を入れ、パワーグリップを使うと良い。
効果:体の動かし方がなめらかになり、ぶつかることや転ぶことが減る。作業のがさつさも解消され、飲み物をこぼす、物を散らかすなどのトラブルも改善しやすくなり、全体的に行動が丁寧になるので、怪我やミスが減る。
方法:
①アスレチック施設や公園のアスレチック遊具など、大きな設備を使って、家庭では体験できないダイナミックな動きをして遊ぶ。
②特に決まりを設けず、お子さまに自由に遊ばせる。ひとつの動きだけに集中しないように、他の遊具もすすめる。
※回数の目安は、他のプログラムと並行して、月に1回程度。程度の目安としては、できないことを無理してやらせることは避ける。
☆初めてのものを強く嫌がらないお子さまの場合には、未経験の遊具や設備をすすめてみましょう。
☆大きなアスレチック施設に行かなくても、ジャングルジムでも同様の体験ができます。ただ昇って降りるだけではなく、くぐる・またぐ・ぶら下がるなどの動きを入れると良いです。※くぐる遊びは、首や体、手足を曲げて通る動きで、ボディイメージが育ちます。
参考文献:木村 順 著 『間隔統合をいかし適応力を育てよう1 発達障害の子の感覚遊び・運動遊び』
★次回は、この記事の続きで、ゆれる遊び、すべり遊びについて書きたいと思います。