発達障害のお子さまへの接し方とは?

2024年1月22日

発達障害のお子さまへの接し方とは?

 

 

 

育てにくさや関わりにくさを感じることがある発達障害をお持ちのお子さまへの接し方について、保護者様や支援者の方々は、日々悩むことがあるのではないかと思います。

現在、療育施設(児童発達支援事業所)で働く私自身も、日々悩みを抱えながら試行錯誤を繰り返している1人です。

 

そこで今回は、発達に凸凹があるお子さまへの接し方について書きたいと思います。

 

 

 

1.できることや苦手なことを把握する

お子さまのできることや苦手なことを把握することは非常に大切です。その子がどのようなことが苦手とするかで、どのように接すれば良いかが変わってきます。サポートを行う場合でも、その子にとって得意なことを伸ばしていくと自信へ繋がっていき自己肯定感を育むことができ、様々な事をチャレンジする意欲を高めることができます。自己肯定感や意欲を高めることで、少しの困難があっても自分の力で乗り越えようとする心を育むことに繋がります。

 

 

2.刺激しやすい物をなくすなど環境を整える

これはADHD(注意欠如多動症)の場合には特に有効な方法です。ADHDの特性として、視界に気になるものが入ってきてしまうとそちらに意識が行ってしまいます。そのため、集中しなければならない時には、視界に入る場所には余計なものは置かないようにしましょう。その意識が向くのがテレビといった音が出るものでなく置物などでも行ってしまいますので、環境内には必要最低限のものを揃えておくことが大切です。
お子さまが何に興味が移りやすいかも把握できていれば、外出していても刺激になるものを見せないように並ぶ順番を替えたり、場所を変更したりと調整することができます。刺激しやすいものは出来る限り省いて集中できる環境を整えてあげることが大切です。

 

 

3.予定や行動などを視覚化する

発達障害のお子さまに多いのが、口頭で説明しても把握するのが難しいということがあります。長々と言葉で説明されても覚えることが難しかったり、集中することが難しいために結果として話を聞かずにうろうろしてしまいます。集中して話を聞けるようにするには、話を淡々とするのではなく、予め紙に内容を要約したものを用意したり、イラストなどを用いて視覚化すると効果的です。
視覚化することで、お子さまは情報として受け取りやすくなり、記憶にも残りやすくなります。
また、1日の流れや学校に行くまでの流れなども紙に記しておくことで、時間の配分や次に何をすべきかを把握することが出来ます。自分で予定やすべき行動を理解し記憶することで、自発的に行動を起こすことができるようになります。

 

 

4.不用意に叱るのではなく、できたことを褒める

発達障害のお子さまは、その特性から、叱られて育つことが多くなります。例えばADHDの特性の中にある『衝動性』の場合だと、友達と一緒にいる時に感情が抑えられず手が出てしまったり、『注意欠陥』の場合であれば急に道路へ飛び出してしまったりと危険であったり、相手を傷つけてしまうケースがあり、親としてもつい叱ってしまいます。当然、いけないことを伝えることは大切で、自分ができないことを認識しトレーニングしていくことが重要になりますが、不用意に叱ってしまっていては自己肯定感が低くなってしまったり、『どうせ自分なんて…』という自己否定が生まれてしまう可能性があります。
発達障害を持つお子さまとの接し方で大切なことは、叱ることよりも褒めることに重点を置くことです。できることや好ましい行動が見られた場合には、すぐに何が良かったのか、どう嬉しかったのかと具体的に褒めましょう。叱ることは反抗的な感情を刺激してしまったり、何がいけなかったのかということを理解出来ないまま、『怒られた』という感情だけが残ってしまいます。いけない事をした場合には、1対1になれる場所で何がいけなかったのかを落ち着いて説明しましょう。
しかし、どうしても親や周囲の人も感情的に怒ってしまったり、何度も伝えているのに、という思いからきつく怒ってしまうこともあります。そういった時は、落ち着いてから感情的に怒ってしまったことを素直に謝りましょう。そして、どうしなければならなかったかを伝えていきます。いつも同じように叱ることは誰でも難しいです。大切なことは叱ることをできる限り減らしていき、その子の良い部分や出来たことを褒めていくようにするという気持ちでいることです。
また、褒める時に素直に自分の思いを伝えることも非常に有効です。抱きしめたり、頭をなでてあげたりとスキンシップを測りながら、自分の気持ちを伝えていくと肯定感や満足感に繋がり、心の豊かさへ繋がっていきます。

 

 

5.興奮状態であればクールダウンを行ってから説明する

こだわりが強く自分が思うことができなかった場合に癇癪を起したり、パニックになる場合があります。発達障害の子どもに見られる特性の1つで、自分の思うように感情をコントロールするのが難しくその葛藤から、大声で叫んだり泣いて感情を落ち着かせようとします。
興奮状態になると、叱っても耳に届かず余計刺激してしまいますので、まずは感情を落ち着かせることが大切です。このことを『クールダウン』と言います。クールダウンをするためには、その場所ではなく落ち着ける場所へ移動したり、嫌がらなければ耳栓などをして音をシャットダウンしたり、深呼吸を促すことが効果的です。その子一人ひとりで、適したクールダウンの方法は異なりますので、どういった時に興奮状態になり、クールダウンするにはどうすれば良いかを日ごろから見つめていくことが大切です。

 

 

6.その子の気持ちに沿った理解、共感をする

発達障害のお子さまは、その特性から、周囲から理解をされずに誤解されてしまったり、距離を置かれてしまうことがあります。特に知的な遅れが見られない発達障害の場合だと、一見何も障害があるようには見えないものの、周りと一緒に活動することが出来なかったり、相手にストレートに言ってしまって孤立したり、中にはいじめへ発展してしまうこともあります。また、特性上どうしても出来ないことを強要されたり、周りの空気を読むことが出来ずに、環境に馴染むことが出来ず苦しむことがあります。
発達障害の特性などを理解してもらうことは非常に重要で、周囲の理解があることで支援方法や密なるサポートを行うことが出来ます。 年齢が小さい時も同様で、発達障害について親をはじめ周囲の人が理解し、サポートを行っていったり、言葉に出来ない感情に対して共感し寄り添うことはその子の心の成長を促す上で大切になります。感情が上手く言葉に出来ない小さい年齢の時こそ、気持ちに寄り添い共感することが重要になります。

 

7.発達障害を踏まえた上での接し方

①接するタイミング

大人が、意図(聞いてもらいたいこと、身に付けてもらいたいこと等)を持って発達障害のお子さやと関わる際は、関わる直前にお子さまの状態を確認して下さい。情緒が落ちついていない時は、適切な接し方をしても効果が得られないので、状態に沿った対応をしましょう。
怒っている時は、数分程度の間を空け、情緒が安定してから接して下さい。
高揚し過ぎている時は、静かな遊び等をして、トーンダウンさせた後に関わって下さい。
また、他者の声が届きづらい状態となっている時(特に自閉スペクトラム症の場合)は、関わる直前に子供とタッチング等を交わし、注意を大人へ向けて下さい。

 

②接する際の言葉・表情・態度

子供は、身近にいる大人からの適切な関わり受けて、肯定感を覚えます。
言葉で褒められるだけでなく、笑みや相づちから肯定感を得ます。又「見守られていること」「行動を共にしてくれること」に対して、喜びを見い出します。
発達障害のお子さまに対しても、表情や態度は、重要な役割りを果たします。

 

③特性に応じた配慮

発達障害のお子さまは、各々症状に応じた特性を抱えています。知的能力、対人関係、社会性、不注意、衝動性と、躓きの領域は様々です。お子さまと接する際は、さり気ない配慮をして下さい。

知的能力が高くないお子さまと接する時は、非言語コミュニケーションを多用し、伝わることを優先して下さい(伝達手段の一つに、絵カードがあります。絵カードの導入は、絵と実物がマッチングしている等の、知的理解を前提として下さい)。

自閉スペクトラム症の特性が強いお子さまは、イントネーションや表情から他者の考えや思いを推測するのが不得意です。それ故に、一般と同じ反応(社会性)を求めるには限界があります。接する際は、態度(行動)や視覚情報(絵、写真、周囲にある物)を用いて、相互関係を深めて下さい。また、話しかける時は「どうして?」「なぜ?」等の曖昧な表現を減らし、理解しやすい言葉で伝えましょう。

不注意や衝動性を抱えるお子さまに対しては、否定感の植え付けとなる誤りや失敗を繰り返し指摘することは、避けるべきです。

まずは、子供の行動を予め予測し、失敗が減る接し方をして下さい。もしも、誤りや失敗が起きた時は、大人が正しい行動を説明し、お子さまと共に行うことで、適切な形に修正しましょう。

大人が子供に注意をする場面で、同じ言葉を何度も浴びせていることがあります。なぜ繰り返すのか推測すると、大人自身が感情的になっていたり、繰り返し言えば「伝わる」と誤った認識を持っているからと考えます。

発達障害のお子さまと接する時は、投げ掛けた言葉の理解度を探るべきで、強い口調で連呼しても有効ではありません。

 

【言語理解を探る言葉掛けの手順】

① まずは、お子さまの視界に入り、お子さまの注意を大人へ向けて下さい(例:肩をゆっくりタッチングして視界に入る)。

② はっきりと聞き取りやすい口調で「伝えたい文」を話して下さい(例:「椅子に座ってご飯を食べて」と話す)。

③ お子さまが理解を示すか、言動や表情をみて確認して下さい(確認時間は10秒程)。

④ 理解していないようなら「伝えたい文を簡素化した単語」に変換して、伝え直して下さい(例:「椅子」「ご飯」と話す)。

⑤ 改めて、お子さまが理解を示すか、言動や表情を見て確認して下さい(確認時間は10秒程)。

⑥ 理解していないようでさなら、「対象物を指差す」等の視覚的手掛かりを加えて、伝え直して下さい(例:「椅子」と言葉を掛けつつ、椅子を指差す)。

 

【望ましくない行動への対応】

お子さまが望ましくない言動をした場合、大人は正しくないことを伝えたり、叱るのが一般的です。お子さまは、叱られる経験を通して言動の是非を知り、次第に自分一人で判断がおこなえるようになります。

問題となる言動に対する大人の接し方は、

①言動の是非に関して、理解してもらうことを含めて接する。

②言動の是非理解は省略し、注意逸らしや状況変化を使って、止めることのみをおこなう。

となり、一般には①の是非理解を含めて接します。ただし、発達障害の子供に対しては②の止めることのみに焦点を当てた方が、有効なケースも多いです。
ポイントは、子供の発達や特性に沿うことです。言語理解が難しい段階や固執が強い時点では、状況変化や注意逸らしで対応します。子供の理解が高くなったら、是非を含めて伝えます。

注意逸らしの例:興味が強い玩具を渡したり、子供から見て楽しそうなことを大人がしたり、好きな遊びへ誘う。

状況変化の例:繰り返しリモコンを押している時は、さっと別の部屋へ連れていく。

 

【お子さまに対する不適切な接し方】

怖さで子供を抑制する

発達障害のお子さまは、理解の難しさや認知の偏りから、注意されたり叱られることが多くなります。
ADHDのお子さまは、症状の気付きが遅れる傾向から、過度に叱られてしまいまうことが多いです。
強い口調で怒鳴られたり叩かれると、お子さまは恐怖から指示に従ってしまいます。即座の反応がある為、大人にとって「最も楽な手段」となります。
しかし、子供は、成長する過程で、小さな誤まりを繰り返します。大人側は、完璧を求めるべきではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:

・キズキ式『子どもの「発達障害グレーゾーン」、その概要と親にできる3つの「接し方」』

・児童発達支援・放課後等デイサービス  ハッピーテラス『発達障害のあるお子さまへの接し方・伝え方のコツ【事例で紹介】』

・児童発達支援・放課後等デイサービス  Dot Junior 『発達障害の子どもとの接し方と生活の工夫とは?』

DEKIDEKI(デキデキ)こども発達支援  『発達障害等の子供に対する接し方』

 

 

 

 

 

 

 

★次回は、発達障害をお持ちのお子さまへの接し方のつづきで、具体的な接し方について書きたいと思います。