よく考える前に手や口を出してしまう

2024年2月29日

よく考える前に手や口がでてしまうのはなぜ?

 

 

 

 

よくある悩みとしては、授業中に先生から指名されていないのに、問題の答えを言ってしまう。先生から注意されると「しまった」という表情をするが、同じようなことを繰り返してしまう。友人が並んでいる列に横入りする。突然、自分の話たいことをしゃべり始め、ひとりで話し続ける。友達を軽く叩いたりちょっかいを出したりするのが好き。廊下で通りすがりの友達をパーンと叩き、相手がびっくりする。などがあります。

 

 

 

 

どうして我慢できないのか?

 

なんの前触れもなく、突然発言したり、友達を叩いたりと衝動的な言動が多いのは、行動のフライングと言葉のフライングとして理解することができます。フライングするお子さまは、周囲には、考える前に行動しているように見えてしまいます。

言葉がフライングするのは「衝動性」が高いからで、衝動性はADHDの特性の1つです。感覚情報の受け取り方が過敏、もしくは鈍感で、周囲の様子を見ながらじっくりと判断することができないのだと考えられます。もしくは、触覚防衛反応が出ているか、注意のコントロールが苦手ということも考えられます。

 

 

 

対応策は?

 

多動性が強い場合と同様に、アスレチック遊びジャンプ遊びゆらゆら遊びなどで刺激を取り入れる。

タッチング遊びは、触覚防衛反応を和らげると共に、言動を落ち着かせる二次的な効果も期待できる。

 

 

 

 

⚫アスレチック遊び

ねらい:日常生活では体験できない動きをして、普段使っている以上に触覚・固有覚・前庭覚を働かせ、全身のボディイメージ作りができる。とくに、棒や縄などを握る時に親指に力を入れ、パワーグリップを使うと良い。

 

効果:体の動かし方がなめらかになり、ぶつかることや転ぶことが減る。作業のがさつさも解消され、飲み物をこぼす、物を散らかすなどのトラブルも改善しやすくなり、全体的に行動が丁寧になるので、怪我やミスが減る。

 

方法

①アスレチック施設や公園のアスレチック遊具など、大きな設備を使って、家庭では体験できないダイナミックな動きをして遊ぶ。

②特に決まりを設けず、お子さまに自由に遊ばせる。ひとつの動きだけに集中しないように、他の遊具もすすめる。

 

※回数の目安は、他のプログラムと並行して、月に1回程度。程度の目安としては、できないことを無理してやらせることは避ける。

 

☆初めてのものを強く嫌がらないお子さまの場合には、未経験の遊具や設備をすすめてみましょう。

 

☆大きなアスレチック施設に行かなくても、ジャングルジムでも同様の体験ができます。ただ昇って降りるだけではなく、くぐる・またぐ・ぶら下がるなどの動きを入れると良いです。※くぐる遊びは、首や体、手足を曲げて通る動きで、ボディイメージが育ちます。

 

 

 

⚫ジャンプ遊び

ねらい:上下の動きで前庭覚を働かせます。ジャンプのタイミングをつかむことで、リズム感も働きます。

 

効果:前庭覚を働かせることで、姿勢の崩れが改善する。ジャンプでは特に、体の中心軸である正中線が整いやすい。また、感覚刺激がよく入るため、自己刺激行動が抑制される。

 

方法

①最初はお子さまに自由に飛んでもらい、どのような飛び方をするのか様子を見る(姿勢が崩れやすいお子さまは、ジャンプする時の着地点が前後左右に動きやすい)。

②大人が両手でお子さまの両手を持って支え、介助した状態でジャンプさせる(大人は支えるだけで、あまり力を入れない)。

③介助して、お子さまがバランスをとれるように助けたり、より高く飛べるよう、勢いをつけたりする。

④ジャンプを続けるうちに、高さがアップして、着地点が動かなくなっていき、身体がシャキッとして見える。

 

※回数の目安は、10分間くらいで100回以上を目標に。

 

☆ジャンプ遊びをより楽しくするアレンジで、大人がタンバリンなどの楽器を持ち、お子様のジャンプの最高到達点でかまえる。お子さまはできるだけ高く飛び、楽器をたたくようにすると、楽しさがupしそうですね!

 

 

 

 

⚫ゆらゆら遊び

ねらい:前庭覚を受け止める回路を活性化させ、ゆれを怖がる姿勢不安のお子さまに適します。

 

効果:前庭覚を受け止める回路の活性化によって、ゆれへの恐怖が少しずつ和らいでいく。経験を積み重ねることで、いずれはブランコにも乗れるようになります。前庭覚が働くため、結果として姿勢の維持・調整もしやすくなります。

 

方法

①ゆれが怖くてブランコに乗れないお子さまは、大人が子供を抱っこして、背中や腰、首筋をしっかりと支える。

②お子さまをしっかりと支えたまま、大人が上半身を前後にゆっくりとゆらす。※この段階では、小さなゆれにとどめる。

③ゆれを怖がらないようになってきたら、ブランコにチャレンジ。大人がお子さまをしっかり抱きとめた状態でブランコに座り、両足を地面につけたまま、ゆっくりと前後にゆらす。

④ブランコのゆれが平気になってきたら、少しずつゆれを大きくする。大人が地面から足を離して、ブランコをこぐ動きをとり入れていく。

⑤お子さまが怖がらないゆれ方をキープしたまま、抱きとめ方を緩やかにする。最終的には1人乗りに移行する。

 

※回数の目安は、5~10分程度。

 

★ゆれがある程度平気なお子さま向けのアレンジとして、ゆれる馬やうさぎなどの形の乗り物にまたがって揺れると、前後左右のゆれが経験でき、前庭覚の感覚を働かせることができます。

 

 

 

 

⚫タッチング遊び

ねらい:お子さまがタッチされている部位に注意を向けるようにぎゅっと押すことで、触覚の識別系が働く。部位の名前を話しながら行うと、各部位を意識しやすくなり、ボディイメージ作りにも役立つ。

 

効果:触覚の識別系が育つと、原始系にブレーキがかかり、頬ずりや歯磨き、爪切りを嫌がることが減る。のりや粘土など、触れる素材も増え、乱暴な振る舞いや自己刺激行動も改善される。

 

方法

①家の中で、タッチングに使えそうな道具を探す。感触の異なるものをいくつか用意する。※例:食器洗い用スポンジ,ヘアブラシ,洗濯用のブラシ,ボディタオルなど。

②用意した物をお子さまに見せ、タッチング遊びを説明する。道具をお子さまの腕に当て、嫌がらないものを探す。※腕ではなく、足や背中の方が注意を向けやすいお子さまもいる。

③腕やすねなど、お子さまが嫌がらないところからスタートする。道具をお子さまの肌に直接当て、少し強めに押しつける。※擦らない。

④お子さまが注意を向けるようになったら、触る部位を動かす。肘→二の腕→肩へ。嫌がる場合は、一つ前に戻すか、いったん手を離す。

⑤他の部位でも行う。最終的には首すじや口元など、お子さまが触られるのを苦手としているところをタッチングする。

 

※回数の目安は、週2~3回、1回3~5分間じっくりと行う。

※程度の目安は、広く均等に圧力をかける。痛みは与えず、注意を向けるくらいの強さにする。

※難易度アップ:苦手な部位にも数ヶ月がかりで挑戦!

 

☆ブラシやスポンジなどを嫌がる場合は、親が素手でタッチングすると良い。その場合も、広い面積を均等に押し、注意を向けさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献:木村 順 著  『間隔統合をいかし適応力を育てよう1  発達障害の子の感覚遊び・運動遊び』

 

 

 

 

 

 

 

★次回は、「歯磨きや爪切りなどで親に触られるのを嫌がる」について書きたいと思います。