ハサミや箸が苦手…。「無理な練習」をさせる前に、まずチェックすべき「肩と腕」の意外な関係

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2026年5月5日

「うちの子、不器用でハサミがうまく使えないんです」 「箸の持ち方を練習させているけれど、どうしても変な力が入ってしまう」

そんなお悩みを抱える親御さんは少なくありません。一生懸命にドリルを買ってきたり、持ち方補助の道具を試したりして、毎日親子でヘトヘトになっていませんか?

こんにちは。現役の作業療法士の佐藤です。日々お子さんたちの「できた!」をサポートしています。

実は、ハサミや箸が苦手なお子さんを支援する際、私たち専門職が一番最初に見るのは「指先」ではありません。もっと意外な場所……「肩と腕」をチェックしているのです。

今回は、不器用さを根性論で片付けず、身体の仕組みから解決する「プロの視点」をお届けします。

 

1. なぜ「手先の練習」だけではうまくいかないのか?

想像してみてください。グラグラと揺れる足場の上で、針の穴に糸を通そうとしたら……。きっと誰でも、指先に変な力が入ってうまく動かせませんよね。

実は、不器用さを抱えるお子さんの身体の中では、これと同じことが起きています。

ハサミや箸という高度な道具を使うためには、その土台となる「肩の安定」が必要です。肩がピタッと止まって土台になってくれるからこそ、指先はリラックスして自由に動けるのです。

もし、ハサミを使っている時にお子さんの「脇が大きく開いて」いたり「肩が上がって」いたりしたら、それは「指先の問題」ではなく「土台の問題」かもしれません。

 

2. 現役OTが教える、器用さを育てる「3つのステップ」

指先の練習を始める前に、まずは土台から整えていきましょう。親子で楽しくできる遊びの中で、自然と肩の安定を育てていきます。

ステップ① 脇を閉める「力」を育てる(脇締めゲーム)

ハサミを使う時、脇が開いてしまうと操作が著しく不安定になります。まずは「脇をピタッと閉める感覚」を脳に教えてあげましょう。

  • 実践のコツ: 脇に小さなぬいぐるみや、丸めたタオルを挟んで、それを「落とさないように」ハサミを使ってみましょう。脇を閉める感覚を脳が覚えると、手元がスッと安定し、余計な力が抜けていきます。

 

ステップ② 自分の体重で肩を育てる

肩の安定感(固定性)を育てるには、自分の体重を腕で支える遊びが一番効果的です。

  • 実践のコツ: 「手押し車(大人が足を持ち、子どもが腕で歩く)」や、四つ這いでの「ワニ歩き」、雑巾がけなどがおすすめです。肩周りの大きな筋肉がしっかりすることで、結果的に指先の細やかなコントロールが可能になります。「指先のドリルの前に、まずは全身遊び」が鉄則です。

 

ステップ③ 成功体験をデザインする(道具を身体に合わせる)

練習のハードルを徹底的に下げることも、大切な環境調整です。

  • 実践のコツ:
    • 手応えのある素材: 最初はペラペラの紙ではなく、少し厚めの画用紙や、ストローを切ることから始めましょう。ザクッとした手応えがある方が「切った!」という感覚が脳に伝わりやすいのです。
    • バネ付きハサミ: ハサミを「開く」力が弱い場合は、バネの力で自然に開く補助付きハサミを導入しましょう。

 

3. 注意点:一番避けるべきはことは、「不器用さへのコンプレックス」

現場で多くのお子さんと接してきて、私が最も大切にしていることがあります。それは、「練習を嫌いにさせないこと」です。

無理な手先の練習を繰り返すと、お子さんは「自分は不器用だ」「どうせできない」という強い苦手意識を持ってしまいます。一度折れてしまった自信や意欲を取り戻すのは、身体の機能を高めるよりもずっと時間がかかり、大変なことです。

「ハサミの練習をさせなきゃ」と焦る前に、まずは大きな紙に自由にクレヨンを走らせたり、粘土をギュッと握ったりして、「腕全体を使う楽しさ」をたっぷり経験させてあげてください。

 

まとめ:遠回りに見えて、実は「土台」が一番の近道

「手先の問題なのに、肩や腕からアプローチするの?」と最初は不思議に思われたかもしれません。

でも、根っこ(土台)がしっかりしていない木に、綺麗な花(手先の技術)は咲きません。現役の作業療法士として断言できるのは、土台が整えば、子どもは驚くほど自然に道具を使いこなせるようになるということです。

  • 手先ではなく、肩の安定に注目する
  • 腕で体重を支える遊び(手押し車など)を取り入れる
  • 練習を強制せず、道具を工夫して「できた!」を優先する

まずは今日から、ハサミのドリルの代わりに「手押し車」で遊んでみるのはいかがでしょうか?

もし「うちの子にぴったりの遊び方は?」「おすすめの道具は?」と迷ったら、ぜひ地域の児童発達支援や、作業療法士に相談してみてくださいね。