わがままじゃないかも?「服のタグを嫌がる」「よく転ぶ」…生活に隠れた『感覚の特性』

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2026年6月12日

​「ドライヤーの音を聞くと耳を塞いでパニックになる」

「服のタグや、特定の素材の服を絶対にチクチクすると言って着てくれない」

「いつもソファーで飛び跳ねていて、全然落ち着きがない」

​お子さんの毎日のこんな姿に、「なんでうちの子だけ?」「私のしつけが悪いから、こんなにわがままなの?」とヘトヘトになっていませんか?

​何度注意しても直らないその行動、実はしつけの問題や本人のわがままではなく、**「感覚の受け取り方の違い(感覚の偏り)」**が原因かもしれません。

​今回は、発達の土台となる「感覚」について、リハビリ専門職の視点から分かりやすく解説します。お子さんの見えている世界が分かると、毎日の子育てのイライラが「なるほど!」に変わりますよ。

​「見えない理由」を探るヒントは『感覚』にある

​【発達障害とは?】ASD・ADHD・LDの違いと、困った行動の裏にある「本当の理由」

 

⬆​以前の記事(発達障害とは?氷山モデルの解説)でもお話ししましたが、お子さんの困った行動の裏には、お子さんのパニックや落ち着きのなさといった「目に見える困った行動(氷山の一角)」の裏には、必ず「目に見えない理由(水面下の氷山)」が隠れています。

​その一番大きな理由になりやすいのが、感覚の偏りです。

私たちの脳は、外からの刺激(音、光、触られる感覚など)を自動的に調整する「ボリューム調整機能」を持っています。しかし、発達に凸凹があるお子さんは、このボリュームのつまみが極端に大きくなっていたり、逆に小さくなっていたりすることが多いのです。

​リハビリ職が注目する「7つの感覚」

​「感覚」と聞くと、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の「五感」を思い浮かべますよね。

しかし、リハビリ(作業療法)の現場では、これに加えて**無意識に使っている「2つの隠れた感覚」**をとても大切にしています。

  1. 前庭覚(ぜんていかく): 身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚(ブランコや滑り台など)。
  2. 固有受容覚(こゆうじゅようかく): 筋肉や関節の曲げ伸ばし、力の入れ具合を感じる感覚(重いものを持つ、力加減を調節するなど)。

​これら7つの感覚のボリューム調整がうまくいかないと、生活の中で大きく2つのパターンの困りごとが現れます。

​パターン1:感覚過敏(ボリュームが大きすぎる)

​少しの刺激でも、脳のボリュームが「MAX」で響いてしまう状態です。私たちにとっては普通の生活音や肌触りでも、お子さんにとっては「黒板を爪で引っ掻く音」や「チクチクするセーターを素肌に着ている」ような強烈な苦痛に感じています。

【生活の中でのサイン】

    • 聴覚過敏: 掃除機、ドライヤー、トイレの流れる音などを異常に怖がる。
    • 触覚過敏: 服のタグや特定の素材を嫌がる。泥遊びや絵の具、人に触られるのを極端に避ける。
    • 味覚・嗅覚過敏: 決まったものしか食べない極端な偏食がある。

極端な好き嫌いも、実はこの感覚過敏(お口の中の触覚の過敏さ)が関係していることがよくあります。詳しくは下記の記事もご覧ください。

【食事・偏食】「好き嫌い」じゃなくて「感覚」の問題かも?現役OTが教える、食卓の座り方とスプーンの秘密

 

【おうちでのサポート】

「慣れさせよう」と無理に我慢させるのは逆効果で、恐怖心が強まるだけです。イヤーマフ(防音耳当て)を使ったり、タグは切ってしまったりと、**「不快な刺激を取り除いて安心させる環境づくり」**が鉄則です。

​パターン2:感覚鈍麻・感覚探求(ボリュームが小さすぎる)

​刺激を感じ取るボリュームが小さすぎるため、普通の刺激では物足りず、「もっと強い刺激をちょうだい!」と脳が求めて自分から刺激を入れに行く(探求する)状態です。

【生活の中でのサイン】

      • 前庭覚の探求: ずっとソファーやベッドで飛び跳ねている。その場でぐるぐる回り続ける。
      • 固有受容覚の探求: お友達にわざと強くぶつかりに行く。筆圧が異常に強くて紙が破れる。
      • 痛覚の鈍麻: 転んで血が出ているのに、あまり痛がらずケロッとしている。

授業中ウロウロしてしまうのも、脳が『もっと動いて感覚を入れて!』とサインを出しているからかもしれません。下記の記事も参考にしてみてください。

授業中などにじっと座っていられない①

授業中などにじっと座っていられない②

【おうちでのサポート】

「やめなさい!」「じっとして!」と動きを止めるだけでは、脳のエネルギーが発散できず余計にイライラしてしまいます。

トランポリンを用意する、荷物運びのお手伝い(重いものを持つ重労働)を頼むなど、**「安全に、十分に感覚を満たしてあげる遊び」**を生活に取り入れると、スッと落ち着くことが多くなります。

​まとめ:見えている世界が違うだけ

​「感覚の偏り」を知ると、お子さんが決してママやパパを困らせようとしてわがままを言っているわけではなく、お子さん自身がその「感じ方の違い」によって一番生活しづらさを抱えていることに気づくことができます。

​「うちの子は、どの感覚のボリュームが大きくて、どれが小さいのかな?」

ぜひ、そんな探偵のような視点でお子さんの行動を観察してみてください。

​もし「どうしていいか分からない」と行き詰まったときは、地域の療育施設のリハビリ専門職(作業療法士など)を頼ってくださいね。お子さんの感覚の凸凹をピタッと整える遊びのアイデアを、一緒に見つけてくれますよ。