いよいよ本格的な夏がやってきました。水遊びや夏祭りなど楽しいイベントが多い反面、「感覚の特性」を持つお子さんにとって、夏は一年で最も過酷な季節でもあります。
「日焼け止めを絶対に塗らせてくれない」「汗で服が張り付くとパニックになる」あるいは逆に「真夏なのに長袖を脱ぎたがらない」といったお子さんの様子に、毎日ヘトヘトになっている親御さんも多いのではないでしょうか。
周りからは「わがまま」「親のしつけ」と誤解されがちですが、実はこれらは**『感覚過敏』や『感覚鈍麻(どんま)』**という、脳が感覚を受け取る際の特性によるものです。今回は、作業療法士の視点から、夏の感覚特性に対する具体的な対策と環境調整のコツをお伝えします。
1. 触覚過敏:「ベタベタ」と「汗」への対策
特定の触り心地を極端に嫌がる「触覚過敏」のお子さんにとって、夏の湿気や汗、そして日焼け止めは大きなストレス源になります。
【よくある困りごと】
- クリーム状の日焼け止めを塗られるのを嫌がる、パニックになる。
- 汗で服が肌に張り付くのが気持ち悪くて、すぐに服を脱ぎたがる。
【OTからの具体的な対策】
- 日焼け止めの「形状」を変える: ベタベタするクリームではなく、スプレータイプ、パウダータイプ、スティックタイプの日焼け止めを試してみてください。また、塗るのを一切やめて「UVカット機能付きのラッシュガード(長袖)」や「アームカバー」という物理的な環境調整で防ぐのも立派な対策です。
- 汗対策は「こまめな着替え」と「冷感タオル」: 汗の不快感には、こまめに着替えるのが一番です。また、肌を拭くときはアルコール入りのシートだと刺激が強すぎる場合があるため、水で濡らして絞るだけの冷感タオルや、ノンアルコールのウェットティッシュがおすすめです。
2. 温度感覚の鈍麻:「暑さがわからない」熱中症リスク
過敏さとは反対に、暑さや冷たさを感じにくい「温度感覚の鈍麻(どんま)」を持つお子さんもいます。夏場は熱中症の危険に直結するため、最も注意が必要です。
【よくある困りごと】
- 気温が30度を超えても長袖・長ズボンを着たがる。
- 喉の渇きを感じにくく、自分から水分補給をしない。
【OTからの具体的な対策】
- 「視覚」で暑さを伝える: 体感温度がわかりにくいため、「暑いから脱ぎなさい」という言葉だけでは伝わりません。室内に大きめの温度計を置き、**「赤い線のところ(28度)を超えたら半袖になる」「タイマーが鳴ったらお茶を飲む」**というように、目や耳でわかる客観的なルール(視覚的支援)を作ることが効果的です。
- 物理的に体を冷やすアイテムの活用: 本人が暑がっていなくても、体温は確実に上がっています。首元を冷やすネッククーラーや、保冷剤を入れられるベストなどを外出時の「お約束アイテム」として身につけてもらいましょう。
3. 視覚過敏・聴覚過敏:「日差し」と「夏の音」
夏は日差しが強く、セミの鳴き声やお祭りの音など、刺激が非常に多い季節です。
【よくある困りごと】
- 外に出ると眩しがって目を細めたり、下を向いて歩いたりする。
- セミの鳴き声や打ち上げ花火の音で耳を塞いで動けなくなる。
【OTからの具体的な対策】
- 視覚過敏には「帽子・サングラス」: つばの広い帽子や、UVカットのサングラス(子ども用のスポーツタイプなど)で目に入る光の量を物理的に減らします。
- 聴覚過敏には「イヤーマフ・イヤホン」: 不意に鳴る大きな音を遮断するため、外出時はイヤーマフやノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを持ち歩き、お子さんが安心できる「音の避難所」を作ってあげてください。
参考になるお役立ちリンク集
感覚の特性は「慣れさせる」ものではなく、「環境を調整して本人を楽にする」のが大原則です。以下のリンクも参考にしてみてください。
1. 【内部リンク:感覚特性の基礎知識】
以前のコラムでも、生活に隠れた感覚過敏について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
2. 【公的情報:埼玉県の感覚過敏への配慮】
感覚過敏は、近年少しずつ社会的な認知が広がっています。埼玉県が公開している「感覚過敏について」のページは、周囲に理解を求める際の説明にも非常に役立ちます。
▶︎ 埼玉県|感覚過敏について
3. 【公的情報:環境省の熱中症予防情報】
温度感覚の鈍麻があるお子さんの外出判断に使える、客観的な「暑さ指数(WBGT)」が確認できる環境省の公式ページです。
まとめ:親も子も「頑張らない」夏の工夫を
「他の子は普通にできているのに…」と落ち込んだり、無理に日焼け止めを塗ろうとして親子で汗だくになったりする必要はありません。
感覚特性からくる苦手さは、気合や根性で乗り切れるものではありません。スプレータイプに変えたり、ラッシュガードを着せたりと、「便利なアイテムを使って環境を変えること」が一番の療育になります。
今年の夏は、親子で「頑張りすぎない工夫」をたくさん見つけて、少しでも穏やかな『優しい時間』を過ごしてくださいね!


